【映画】シン・ゴジラ(2016)【感想】
予習に本家ゴジラやハリウッド版ゴジラを視聴してから観に行きました!
この映画は噛めば噛むほど味が出るスルメ映画であり、かつ非常にオタク向けB級映画だとおもいます!
なのでアクション系映画、あるいみの娯楽映画を期待して観るととてもつまらないかも。オススメ層は…本当にオタク層でしょうか。文学的なオタク、ミリタリー系オタク、サブカル系オタク、鉄道オタク…映画では「パンドラム」「インフィニ」「エイリアンvsプレデター」好きな方ならはずさないと思います。
情報量が非常に多く、私は大好物な映画ですね!いろいろ妄想しがいがあります。
「ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官・矢口蘭堂を演じる長谷川博己、内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が出演。加えて、狂言師の野村萬斎がゴジラのモーションキャプチャーアクターとして参加している。
視聴直後のハイテンションで書いているのでまだまだ細かい所、ちゃんと理解していない点が多いとは思うのですが…
以下、ネタバレ感想ダラダラと。
まず人間の描写がリアルです。特に官邸系。
うだうだして決まらない会議室、結論ありきで机上の空論に興じる官僚、メモを回す時の仕草など、普通の人間の姿の描写がリアルとしか言いようが無いくらい再現/演じられています。素晴らしい。
この辺の描写は庵野監督という人物は得意なのかもしれません。アニメ、エヴァンゲリオンの第一話における戦略自衛隊の作戦進行などを思い出しますね。
しかしあまりの人間らしさの描写に「映画でまでこのような場面を見るなど…」とか「汚い!人間汚い!」という思いは募りますし、ゴジラ目線で「愚かな人間どもめ…」なんて思ってもしまいます(ゴジラはそんなこと思いませんが)。
その中で「こんな人物、現実にはほぼいない」と思ってしまう主人公のような、フィクションの人物がうまいこと混じっているのです。
異色な巨大不明生物特設災害対策本部、略して「巨災対」のメンバーはオタクエリートといったところでしょうか。でもオタクが集まっても最初に召集された有識者会議みたいになると思います。
キャラクターはハリウッド版ゴジラとの違い「愛(恋愛、家族愛、etc...)」ではなくポジションにいる者の「責務」に重点をおいてストーリーを展開させます。なのでこの映画は登場人物への感情移入にフォーカスしたものではないでしょう。(8/13追記)
把握しているキャラ別雑感
敬称略。
矢口蘭堂/長谷川 博己…ボスではない、リーダータイプ主人公。絵に描いたように主人公らしい存在。若くしてこのポスト…こんな人実在しないんだから!(え、小泉進次郎?)
カヨコ・アン・パタースン/石原さとみ…ルー語キャラ。でも英語上手い(たとえば劇場版PSYCHO-PASSと比べればはるかに。耳障りじゃない)日系米人というには…ちょっと…無理が。でも観てるとだんだん欠かせないキャラだなという気持ちに。不思議!
赤坂秀樹/竹野内豊…イケメン。絵に描いたようなエリート政治家。作中の台詞にあるような強運をもつかみとる男。
大河内清次/大杉漣…一番官僚らしい人だと思った。リーダー的資質があるのではなく総理大臣として妥当な人物といった風のエリート。
里見祐介/平泉成…農林水産大臣から内閣総理大臣臨時代理へ。強運の持ち主としては赤坂以上かもしれない。個人的には作中で一番好きな人物。一番面倒なときに(臨時代理でも)総理をやってくれてまともな判断をした。のらりくらりとしているけれど、太公望並みに器の大きな人物。のびたラーメンをみて「あーあ伸びちゃった」って食えないのはお前だwww
巨災対メンバーはオタク的な意味で全員最高です!化粧しない女性科学者、爪弾き者、あぶれ者…各メンバーの紹介は好きなシーンの一つ。
全体的に大人な登場人物が多かったですね。
あと観終わってから知ったのですが
シン・ゴジラの途中で映画監督3人がそれぞれ御用学者役で出演しているのですが、映画館で5秒くらいデジャヴにとらわれて気づいて笑いを堪えるのに必死でした。#シン・ゴジラ pic.twitter.com/9k0yXSqes8
— エッジ (@edge_wardog) 2016年8月4日
まさかあのお三方だったとは…www
この辺がじわじわきます。
2016/08/26追記
違ったみたいですね。ご本人様ではなかったようです。キャストもっと確認しなきゃ…でも残念w
小道具からみる細部へのこだわり
登場人物が使用している文房具!
政治家勢はモンブランやクロスなど(1万〜3万強?)海外高級ライン筆記用具を持っているのに対し、巨災対のメンバーの速記に向いた滑らかな書き味と使い捨てても良いような安価なボールペンを使用していること。
二回の視聴で確認した商品をアマゾンから。
モンブランはいいですねー。羨ましい。モダンなデザインのスターウォーカーシリーズ。毎年限定品が出ていますが、作中のは多分限定品ではない…筈…。
クロスボールペンはクリップがゴールドかシルバーか、マット仕上げかラッカー仕上げかでもまたお値段が変わりますが…。しっかりした書き味で海外メーカーの中ではかなり人気があります。
巨災対メンバー?だったか…。誰だったか忘れたけど、おそらく使用しているのがぺんてるのランスロットシリーズ油性ボールペン。しっかりしたアルミ製ボディとなめらかな書き味。インクの粘性は少々癖ありなので個人的にはジェットストリーム推し。
会議室で使っている支給品?のボールペンはクリップの形状的にゼブラタプリクリップかと思うのですが…。
閣僚会議では三菱鉛筆ユニシリーズ。
私には文房具を見極めるにはシーンが一瞬過ぎて…是非じっくり調べたい。
まだまだありそう…その人物がどんな性格なのかどういう仕事に従事しているかを裏付ける指標にもなりそうなのでもっとチェックしたいです。
ゴジラの素人生態所見
庵野さんよく考えたなぁ…と関心しました。
ディザー映像などであの目がギョロッとしたゴジラを見て、なんか元祖ゴジラに似せたのかな、と思いましたが生態的な理由がちゃんとあると個人的に解釈。元来海洋生物であるゴジラに瞼はないのだと、はっとさせられました。ギョロッとした目は両生類や魚類(肺魚)のような目由来…ただその分、陸上に上がった時に目が乾きそうで…視聴しているこちらとしては内心「目が…目がぁぁぁ!!」とムスカ状態。
またウーパールーパー的な背びれが、やがてゴジラのトレードマークでもあるあの背びれになるとは…なるほど納得。
幼体の頃に鰓があり、上陸を契機に鰓からの大量の出血/排水。鰓呼吸から陸上に適応した肺呼吸への変化です。すごい。
原子炉相当の器官をもっているため体温が非常に高温。シン・ゴジラの体表面は常に蒸気/熱気で歪んで見える。
二度目の上陸では相模トラフあたりにでもいたためでしょうか…高温高圧に適応できる外皮を会得して襲来。自衛隊の総攻撃を物ともせず、弱点になりえそうな目には瞬膜を獲得済み。しかも重火器に対処できる膜とは。
餌を摂取する必要が無いので舌がない。代わりに下顎が裂けてビーム排出に有利な形状に。もはやゴジラは生物ではなく高エネルギー生命体。
個人的に巨体を支えるのに二足歩行は非合理的ではないかと思ったのですが…尾のせいですかね?あの尾を含めてバランスを取るために二足歩行に…?尾を退化させたほうが良かったのではと思ったら…尾も重要な器官だった。まあ二足歩行に関しては私の妄想です。ゴジラは二足歩行でないと!
BGMに関して
音楽面では…庵野さんらしいチョイスというか…エヴァンゲリオンでの作戦会議のBGM(踊る大捜査線での使用でも有名な楽曲)、本家ゴジラや耳についてはなれないメカゴジラの曲など…恐らくゴジラ好きにはたまらない選曲。しかしある意味、シン・ゴジラとして新しい楽曲を期待していたのならば使い回しと思えて物足りないかもしれない。
今回鷺巣さん、『伊福部昭の完コピ』という庵野監督の要望に従いオリジナル音源を1拍ごとBPM割り出してドンカマ作ってロンドンの交響楽団にアビーロードスタジオで死ぬほど忠実に演奏(ズレや演奏ミスまで再現)してもらった結果、最終的に庵野判断で全ボツになった話すごすぎる #シンゴジラ
— 中村 遼 ryonakamura (@nkmrryx) 2016年8月3日
鷲巣さんの曲聞きたい…。
個人的に引っかかる表現。
台詞の「我が国」や「かの国」という言葉。極右っぽく感じるためというか…「我が国、我が国家」という言葉で表現される「個人の居場所のなさ」を感じるためでしょうか。社会的に認められない人がやがて拠り所として見出す自国への依存心を表す言葉として認識してしまうので…。
でも鼓舞するならばこの言葉ほどささるものはないでしょう。
個人的に物足りなかった所。
「もっと高層ビルとか破壊してもいいのよ?」
これが物足りなかった!
多分ハリウッド版ゴジラがその辺の見応えがあったせいでしょうか。
特に第二次上陸時の武蔵小杉戦。あの高層マンションとか…壊さないならいっそもっと避けてくれても…。わざわざビルの間とか巨体が通りづらいところ通って、ビルが無傷なんて…。自衛隊が総力戦展開してもゴジラにのみあたって、ビルが無傷なんて…解せぬ。
そういえば自衛隊敗退後、銀座が吹き飛ぶシーンとか本家ゴジラのオマージュですよね。松坂屋が縁起でもないと苦言を呈したとか何とかw
個人的にテンション上がっていた所。
・第一次上陸時のシン・ゴジラ第二形態。祝!初上陸とかそんなもんじゃなかった。なんと気持ち悪い容姿!その想像だにしなかった造形に目が釘付けに。死んだ魚のような目、鰓呼吸から肺呼吸への変化で鰓からの排水ドバーっとか。こんなの見たら逃げる。来たら逃げる。
・第二次上陸/タバ作戦(8/13修正。耳で聞いてタ「パ」だと思ってました。すいません。ちょっとぐぐったところ「タバ」は最終防衛ラインとなった多摩川の由来「丹波川」から来ているとも言われてます)。戦車隊がカッコいい!ミリタリー系の事柄は詳しくないのですが、そんな素人の私が観ていてもカッコいいと思いました。走りながら砲撃のシーン、音にもしびれました。
・ヤシオリ作戦。(8/13少し追記)
八塩折の酒というヤマタノオロチを酔わせた伝説から来た作戦名だそうです。ヤシマ作戦と似た呼称でニヤッとしてしまう。
あわせて血液凝固剤を投入するために用意されたポンプ車、タンク車隊を「アマノハバキリ」――ヤマタノオロチを退治した剣の名称で呼称。
何かリーサル・ウェポンや新兵器という訳ではなく、現在人間のもつ技術的な力でゴジラに対抗しようという姿勢は、なんとなく「技術大国日本」などといわれた時代のオマージュだと思います。無人新幹線爆弾、無人在来線爆弾は東京駅だからこそ出来たと思いますし個人的には好きです。
あるもので、出来ることをする。
しかし戦車隊ですらゴジラをコケさせる事はできなかったというのに…(爆薬どれだけ積んだんだろう?)という点は…解せぬ。
ゴジラに血液凝固剤を経口摂取させる姿を観ると「ゴジラvsビオランテ」の「薬は注射より飲むのに限るぜ、ゴジラさん!」という権藤吾郎一佐の名台詞を思い出さずにはいられない。
その他の雑感
ゴジラが襲来しても日常生活が進む姿はどこか皮肉っぽく見える、日常だと思った。人々は生きること=生活を止めない。対岸の火事/襲撃外の地区ならばそのまま生活が続く姿をあえて描いている。
しかし360万人大疎開の動乱はもっとごたごたしておぞましい物として表現して欲しかったように思ってしまう。ニュースで暴動が起きてるとかそんな表現でさらっと。一応国会前でゴジラのもたらした放射能に関して?デモ隊が集っていたようですが…。
本家「ゴジラ」は戦後を表現しているのに対し「シン・ゴジラ」では災害後を表現しているように思った。
視聴だけでは分からなかった出来事を妄想
・シン・ゴジラは何故出現した?
由来など(海洋投棄された放射性物質が影響したこと等)は一応ほのめかされていますが何故羽田沖に突如出現したか?
冒頭の船の所有者、牧博士が何らかのトリガーになったのではないでしょうか?ゴジラを覚醒させるような何かをしたのではないかと。自殺をほのめかすような船内の様子とか、直後、船の直下?でゴジラが出現したことといい…。ゴジラの細胞の解析もしていたみたいですし…。ただ結局、これはついに不明のまま。
巨災対の当初の推理のように餌…エネルギー源として放射性物質を求めていたなら原発とか原子力潜水艦を狙ったりするのでわざわざ都心部を襲撃する必要性はないはず。もしかしたら熱を発している都心部を熱源=エネルギー源と勘違いして上陸したのでは?外気が15度程度の10月〜11月頃の設定みたいなので暖房熱とかを勘違い…などと考えていましたが、シン・ゴジラは元素変換能力を持っていて餌は不要だとも言っていたのでummm…。
ただ偶然そこを通っただけと考える他ないですかねぇ…。凡てのことに意味があるわけではないとおもいますし。
・凍結したシン・ゴジラとの共存とは?
細胞採取して原子力エネルギー源として利用しようと研究するんですね!
シン・ゴジラをクローニングするのではなく、エネルギー源になっていたであろうシン・ゴジラの原子炉相当の器官を複製再現する…これぞ人間の英知!みたいになって各国がエイリアンよろしくシン・ゴジラの器官や細胞をもとめて凍結した巨体へ群がる…しかしそこに新たな覚醒が…!
そう考えると続編期待したくなりますね。
2回目視聴でまた思った事、追記
8/13追記。
矢口はヤシオリ作戦以降、ヤシオリ作戦、アメノハバキリという名称からゴジラをヤマタノオロチに擬えた命名をしていることが伺えます。
さて、ヤマタノオロチ伝説では最後、ヤマタノオロチの尾から「アメノムラクモノツルギ」が出てきて、後に天照大神に献上されます。もともとはアマテラスが作らせた剣で、天の岩戸に隠れた際落としたものだとか。この剣を振るうと天空に群雲が発生するという伝説があります(ヤマタノオロチもこの剣が体内にあったため?つねに雲を発生させていたとか。もう少し調査が必要ですが知るかぎりではそういう伝説だったかと)。
シン・ゴジラのラストでフォーカスされる尾…そして尾にあるもの…。
もしそれがアメノムラクモノツルギのようなものだとしたら…あるいは関係のあるような何かだとしたら…。
キーワードの連想で、アマテラス→太陽→核融合環境のある天体→核融合/高エネルギー生命体ゴジラ→ヤマタノオロチ→フォーカスされる尾にあるモノ達→ヤマタノオロチの尾から出てくるアマテラスがつくらせた剣、アメノムラクモ(天叢雲剣、天に群がる雲)ノツルギ…。
無関係かもしれないけれど、関係があるかも!?
…続編!!続編があっても良いのではないでしょうか!?
一回観ただけでは味わいきれない隠し味がある映画だと思います。
小ネタなど情報量が非常に多い映画だと。
後から後から「あ!」とさせられることが出てきて、感想や妄想が書き終わることがない映画です。
なので賛否分かれるのではないでしょうか。とても人を選ぶ映画ですので指標としてはオタク気質な方におすすめです。あとスルメ映画好きな方にもオススメ。
もう一回みたいwww