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Shilhouette

せっかくなんで観た映画を徒然なるままに

【映画】セッション/Session(2014)【感想】

movie

宣伝されると嫌でも気になってしまいます。でも私は宣伝の”血まみれの手でドラムを叩く姿”に戦慄してより興味を持ちました。(自分でもなんという動機だと思いますが)

2015年度アカデミー賞®のダークホースが、3冠を獲得!!名門音大に入学したドラマーと伝説の鬼教師の狂気のレッスンの果ての衝撃のセッションとはーー!?[才能]VS[狂気] この衝撃に、息をのむ。© 2013WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 

もうすごい映画でした(戦慄) 

こんなにおもしろい映画はあまりない…!いや、最近観た中ではなかった…!この興奮に絶賛せざるを得ない。

しかし女性向きではないかも?あと慈愛のカケラもありませんので、決してカップルでご覧になるようなことはないように。

この作品で描かれているのは狂気的なまでの究極です。

 

主人公はアメリカ屈指の音大に入学したニーマン。

フレッチャーという人物との出会いが彼を狂気的な何かへ導きます。

 

正直主人公ニーマンはボンボン学生だと思っていたのです。しかしフレッチャーだけがその狂気/極限にいたのではなく、ニーマン自身が向かっていたことに戦慄。

気になる彼女、ニコールに逃げるかと思えばそんなこともなく…ニーマンが極まっていた…!

 

ニーマンもフレッチャーと同じ人間――芸術家だった。

 

芸術家なんてだいたい糞野郎です。分野に特化した人間というのはそれ以外に取り柄がないからこそ特化するともいえます。社交的な芸術家なんてあんまりみません。慈善活動的な芸術家というのは聞いたことありません。例えば魯山人、彼の遺した言葉は大好きですが人間としては嫌いです。

 

芸術家の矜持――心身ともに負荷をかけて限界を突破することで、洗練され高みへ向かう――それは分かります。自身の肉体を、その精神を、ただ音楽と一体化するためにと虐め抜いた先に得られる技術…究極。

それがフレッチャーが享受しようとしたもの。

その師弟関係に愛があるのか…と一瞬考えましたが、すぐに愛など不要と気づきます。

技術、ただただ技を極めること。余分な部分を全て余分な部分を全て削ぎ落とすことで得られる、削ぎ落とすことで得られる究極を目指すこと、ある意味それが師弟愛(バカな。私はそれに関しては一部否定します)

 

作中でニーマンはフレッチャーが時折見せる人間味ある姿を見ていて、それがあるせいか憎みきれなくなります。厳しいのは音楽に関することだけ、と。

そんなこともないみたいですが。

フレッチャーという人物の人情はカテゴリーが難しいです。人らしい愛情があるとは言いがたい、でもすごく感情的。ただ言えるのは本当にジャズにの匠であるということ。だから認めてもらいたい、認めさせたい、認めろ!と移り変わるニーマンの想いにこちらも共感。事故にあっても這って縋るニーマンを無情に千尋の谷へ蹴落としまくるフレッチャーについに激昂するニーマン。

その騒動を経てニーマンは退学、フレッチャーは首に。

再会したフレッチャーがニーマンをジャズの演奏会に誘い

「よし、楽しもう」

といった時、フレッチャーがすごく好きになってしまった。「ああ、フレッチャーはジャズを愛している。だから厳しいのだ!」と。

 で、私のそんな感激は裏切られるという。

誘った演奏会で披露する曲目は全て嘘。ニーマンの証言に学校を首になったことを、大衆の前で恥をかかせることでしっかり復讐するフレッチャー。大きな会場で取り繕うこともままならず、自身の不出来さ(決して力不足ではないのに)を披露するような形になったニーマンが感じるプレッシャーが、観てる此方にも伝わってくる…!

この展開はもう…最高です!もうホント糞野郎です!

無情なのに感情的な男の所業。悪魔というか幼稚というか。

 

思うにフレッチャーの不幸は「教師になったこと」ではないでしょうか。

フレッチャーは匠であり学校の先生ではなかったし、向いてなかった。何故なら匠だから。自身も「育てられなかった」とは言ってました。彼なりの必死の努力は教育ではなかったのです。いる場所が違ったんだと思います。

でもそのお陰で?ニーマンに出会えたんですが。

 

ラストの9分19秒は本当にぐいぐい引き込まれました。

「ラスト何分を見逃すな」というキャッチコピーはだいたい辟易するものが多いのですが、この映画は違いました…!

刮目したまま逸らせなくなる。強引に魅せつけられる。目眩のするほどのプレッシャーや、その狂気にも、愛憎にも、闘争本能にも。

 

ニーマンの体がドラムや音楽、その場の空気と一体になっているシーンには鳥肌がたちました。これがほんとに演技なのかと思う程…。

初めてフレッチャーとニーマンがシンクロ/セッションして到達した境地…凄まじかったです!!

 

認めさせたいと追い縋る姿が惨めなものではなく、相手を屈服させる執念と技術の原動力になり、共に目指していた境地にたどり着いた師弟…。

これは言葉では言い表せないので是非全部見て欲しいですね。ラスト9分だけを観るだけでは味わえないので全部通して観て欲しいです。ラスト9分のために。