Shilhouette

せっかくなんで観た映画を徒然なるままに

【映画】ポゼッション/The Possession【感想】

おお!サム・ライミ監督のホラー!これは観なければ!!と視聴した映画。よく見たらサム・ライミ監督プロデュースでした…厳密には違うのか…ぐぬぬ

余談ですが「過去10年間で最も失望した続編」1位はサム・ライミ監督の『スパイダーマン3』との評価ですが個人的にはすごく好きなんですけどね…スパイダーマン3…。サンドマンもヴェノムもよかった。赦す(forgive me)とか帰る(go home)とか…結構難しいテーマをさらっと扱った作品だと思うのですが。でもいわゆる恋愛パートは印象に一切記憶に残っておらず、これがブーイングの理由だそうで…

ライミ監督自身が「酷い出来」と認めている

 らしいので…不本意な出来だったのだろうなぁ…。

 

www.youtube.com

実話に基づいた物語を、サム・ライミがプロデュース!
ユダヤの民話に伝わる邪悪な魂を封じ込めたとされる“ディビュークの木箱"の記事がロサンゼルス・タイムズ紙に掲載された。背筋が凍りつくような話に多くの人々が魅了されたが、サム・ライミもまたこの真実の物語に魅了され、映画化されることになった。
その撮影中にも数々のエピソードがあり、悪魔祓いのシーンが撮影された“リバービュー精神病院"は瞬時に凍りつくような雰囲気があることで有名な廃墟で、部屋に入れないスタッフもいたり、本物のディビュークの木箱を離れた場所に保管しておいたにもかかわらず、とつぜん電球が破壊したりと怪奇的な裏話も尽きない。

【ストーリー】妻と離婚し、週末ごとにふたりの愛娘と一緒に過ごしている中年男クライドは、あどけない次女エミリーの異変に目を疑った。
ふと立ち寄ったガレージセールでアンティークな木箱を購入して以来、エミリーがその箱に異常な執着を示し、時には凶暴な振る舞いを見せるようになったのだ。その後もエミリーの奇行はエスカレートし、天真爛漫だった我が子の信じがたい変わりように危機感を覚えたクライドは、現代医学では解明できない原因があるのではないかと独自の調査を開始する。しかしそのときすでにエミリーの小さな体には、この世ならぬ恐ろしい何かが棲みついていた…。

 

 

さてポゼッションは悪魔祓い系ホラー映画です。占領、所有、憑依という意味。

以下、ストーリーネタバレ含め感想をダラダラと。 

 

出だしからその驚異的なパワーを見せつける箱。最初からこのような映像を観せつけるとはなかなかキャッチーだと思います。

 

主人公クライドは良きコーチだが、夫として父としてはダメな男。

その元奥様ステファニー、はちょっと神経質な、家では靴を脱ぐように言うちょっとめずらしい方。汚れるのが嫌いな潔癖症?あるいは服飾を扱っているためかな。日本においでよ。

そして冷め切って破綻した夫婦間を行き来する娘2人…都会っ子なお姉ちゃんハンナ、と好奇心旺盛な妹エミリー。対象的な姉妹。お姉ちゃんは家族がバラバラになったことを前向きに発散しようとしているのに対し、妹は内に秘めて押し殺すタイプととれる。

 

エミリーはふと立ち寄ったガレージセールで例の箱と出会う。この箱…ヘブライ文字が書かれています…。よく見たらこれディブクの箱(The Dibbuk Box - The Haunted Jewish Winebox)じゃないですか…!ディブクとは

自殺などの罪業のため輪廻を行うことのできなかった霊が悪霊となって人間に憑依し、憑いた人間に異常な行動を取らせる

引用:ディブク - Wikipedia

後にこれを「とてもかわいい」と評した妹はなんかの才能がありますね。

 売り主もさらっと売っているんじゃあ、ない。

瀕死のお母さんめっちゃ「ダメー!!」っていってるのに…このダメ息子!(でも多分治療費介護もろもろの支払いのためのガレージセールなのよね…新興住宅地っぽいし、元の持ち主の家族も引っ越したばかりで物入りだったのかな)

 

この箱は仕掛け箱?(有名なディブクの箱はワイン箱)で開けると中には怪しげなアイテムがもりもり。古い思い出の品のようなものから呪術的なものまで。それらを気持ち悪がらずに愛おしげに見つめるエミリー…やはり何かの素質があるとしか…。中でも彼女とくに執心したのが指輪。これでいつでも怪異と一緒にいられます。

 

ギクシャクしたことで分裂に歯止めがかからず、同じ屋内でも孤立感がある家族に怪異はその姿を表します。

背後の暗闇になにかいる…。

その辺の陰影は素晴らしい。全体的にどこか8mmフィルムっぽい映像に、闇が黒く、暗く張り付き、しかしメリハリの付いた光にどきどきする。

 そして様子がおかしくなるエミリーの姿が異常さを増してハラハラさせる。可愛いし演技すごいです。

 

怪異とともにより悪化する家庭環境/夫婦間。

多量の蛾の襲来を聞いてお母さんの(嫌味だとは思うけど)発言がなんか気持ち悪かった。あまり取り合ってないというか、真剣に受け止めていない点が。

実は父親よりも母親のほうが子どもに対してかなり無関心だったんじゃないかな。それを多忙な父親のせいにしている気がする。

 エミリーの異変がエスカレートしたときも、母は両親の離婚や引っ越しのせいではとなるのですが、お父さんはすぐに箱のせいかと直感します。

その点は娘をよく見てるんですよね、ダメパパだけど。

 

箱を没収した先生はいろいろな意味でお気の毒でした…。

箱に危害(破壊しようとしたり、こじ開けようとしたり)を加えた人には問答無用の強力霊障を起こす仕様だなんて知る由もないですからね…。

 

クライドはエミリーから箱のことについてさらっと聞き出し、箱のなかに誰か/何かがいることを突き止めます。危険に思い箱を処分しますが英断ではありませんでした。

 箱のなかの”彼女”はエミリーが特別なのをちゃんと分かっているようで…(うん…エミリーはマジで特別で特殊だ。箱との出会いからもよく分かる)箱と何らか言葉を交わし取り憑かれます。

 

ところで悪霊に憑依される前からエミリーの喉奥に手が見えるのは…どういうこと?( ^ω^)

 

クライドは何とかエミリーを助けようとしますが、ここで障害になるのがステファニーと新しい夫のブレッド。新たに付き合ってる男性はステファニーにとって楽しい人だが、娘達の力にはなれない存在(キャラ)というのがなかなかいい。ブレッドは「こういう状況の(両親が離婚した)子どもはこういうものだ」というステレオタイプの対応のみしているので真相を見いだせないわけです。思春期の女の子は歯の矯正をすべき、と思っている点からも伺えますね。

 

一方クライドはちゃんと諸悪の根源を認識し、大学の教授に助言を請うという行動力。さらに独学で悪魔祓いを学習。しかし…独学で悪魔祓いは基本NGであるよ…。

 

こういうモノの対処では悪霊を媒介する物を破壊すれば解決したりするのですが、今回の場合箱がもともと悪霊を封じるツールなので媒介とは異なること、破壊しようと試みると強力な霊障を起こす(オープニングや学校の先生)ことから、その手法がとれずかなり厄介です。例えば「オキュラス(2015)」などもそういうモノですね。

素人の祈りは届かずクライドは手がかりを求め箱を持ってラビ(ユダヤ教の師とか賢者に相当する人)のもとへ。

悪魔が求めているものが魂であることを知り、娘の危機を確信。

そしてこの手の悪霊に効果的な対処法――悪霊の名を解明し、箱に還すという方法を教わります。名前が弱点というのは一見陳腐ですが、天使や悪霊は実体や魂を持たないので”名”で存在を定義されるというのが由縁でしょう。日本民話の「鬼六」など民族学的にも散見されるデティールですね。

ラビ達は強力な悪霊にお手上げ。唯一若いザデックが破戒を恐れず手助けを申し出ます。

 

そしてストーリーではちょっとだけ待ってたステファニーが怖い目にあうシーン!

ステファニーは見たくないもの、受け入れられない現実にはあまり対処できない。というか危機的状況を認識しておらず、娘だから母親の言うことには従うと思ってる感がある。ちょっと手ぐらい切ってしまえと思ってしまいました。

でも背後にガラス片を持ってエミリーが立っていたシーンは非常にゾクゾクした。

ここにきてようやくステファニーも理解し始める。

 

話が進むとエミリーの存在がどんどんどす黒くなってくるのがビジュアル的にすばらしい。着てる服とかメイクの感じとか。

 役立たずブレッドは総入れ歯の刑に処された模様。歯の矯正にこだわっていたことを考えると皮肉ですね。

 

クライドはザデック助けからついに悪魔の名「アビズ―(子殺し)」を手に入れます。

ヘブライ文字をちゃんと右から左に読んでいて細かいところも力を入れてると感じました。

 

病院で検査をして医療でも手に負えない存在であること、ステファニーやハンナは誤解していたことをクライドに謝ります。私はこれだけでも充分クライドが報われた気がする…。

 

一刻を争うので取り急ぎ病院で悪霊を箱に戻す儀を行いますが、やはりパワーが強い。

エミリーはスパイダーマン座りでパンチr…なんでもない。

 揉み合いになりながらもエミリーから悪魔の気配が消え、何とかなったかと安心するもちゃんとザデックは気づいているので悪魔の名を呼ぶ。悪魔は喚び声に応えなければならないから。そしてクライドの中に逃げ込んでいた悪霊に命じて箱に還すことに成功。

 

離婚があり家族がバラバラになったことで不安を感じていたエミリーは、箱に導かれてしまっても仕方ない因果だったのかもしれない。けれどもその逆、家族の絆を見せたこと…身内の縁のもの(もともと箱のなかに入っていた記念品のようなものなどもそうでしょう)が封じる力になったというのも因果だと思います。

 

最終的に箱は破壊できないのでザデックが何処かに保管を…

ああああーーーー!!

 

うーん実に後味の悪い…。

儀式をしたものに取り憑いたりするからヤダといったラビ達の言葉/警告はこれを示していたとは思いますが…こうして再び箱は人手に渡ることを示唆して幕を閉じました。

 

全体的にゾワゾワする不安感を掻き立てる映像にストーリーでした。

すごく怖いかといえばそうでもないです。ビックリ要素も殆ど無く、じっとりとした不安です。

なのでホラー観慣れている人には物足りないかと。

ゴアなところは殆ど無いので比較的見やすいと思います。

個人的には暗闇の表現が素晴らしいと思います。真っ暗すぎて何も見えなかった「The LooP -終わらない夏休み-」とは大違いですね!人が根源的に持っている”闇”に対する恐怖…人はだんだんと、成長するにつれ暗闇に対しては抵抗力を持ちますが、その根源的な恐怖を思い出させてくれる映像だと思います。

「後ろに何かが」という恐怖が怖い方には非常に怖がらせてくれる要素があると思います。

 

 まとめると怖くはないけど不安を感じる。美しい闇。家族の絆。